「RPAで入力や転記を自動化しても、問い合わせの確認や例外への対応は人に残っている」といった業務の改善を考えるとき、選択肢になるのがAIエージェントです。
AIエージェントとRPAは、得意とする作業が異なります。決まった項目への入力や転記にはRPA、問い合わせの内容を読み取り、必要な情報を調べて回答を作る業務にはAIエージェントが候補です。
本記事では、AIエージェントとRPAそれぞれの特徴と向いている業務、両者を連携させる考え方、導入前に整理すべきことを解説します。
AIエージェントとRPAの違いを一覧表で比較

AIエージェントとRPAを比較する際は、「何を指示し、どのように処理を進めるか」に注目しましょう。主な違いを5つの観点で整理します。
| 比較項目 | AIエージェント | RPA |
|---|---|---|
| 指示の与え方 | 達成したい目標や、対応時に守る条件を与える | 実行する操作手順や、条件ごとの処理を設定する |
| 判断・処理の進め方 | 目標や状況に応じて、次の処理や使うツールを選ぶ | あらかじめ設定した手順や条件分岐に沿って処理する |
| 得意な業務 | 問い合わせ内容の読み取り、複数の情報の収集・整理、回答案の作成など | 入力・転記・集計など、手順が決まった繰り返し作業 |
| 扱うデータ | 問い合わせ文や資料など、内容の解釈が必要なデータも扱う | 表の数値や決まった入力項目など、形式が整理されたデータを扱う作業に向く |
| 変更・例外への対応 | 状況に応じた対応を選べるが、対応できる範囲や判断の正しさには限界がある | 設定済みの条件で対応し、想定外の場合は手順の修正や人の対応が必要になる |
RPAは事前に設定されたルールに従って定型的なタスクを実行する一方、AIエージェントは生成AIなどの技術を活用し、状況に応じて自律的にタスクを実行できます。ただし、導入・運用コストは用途やシステム構成によって異なるため、自動化する業務に応じた選定が重要です。
扱えるデータや実行できる処理は、使用する製品や組み合わせる機能によって異なります。RPAでも文章の転記などは可能なため、文章を扱うかどうかだけで使い分けることはできません。
AIエージェントとは、目標に応じて判断・実行する仕組み
AIエージェントは、与えられた目標に向けて必要な情報や処理を選び、実行する仕組みです。状況に合わせて複数の情報源やツールを使い分ける点に特徴があります。
AIエージェントは、文章の生成に加え、接続したツールを通じて処理を実行できる仕組みです。人が情報を探して整理する作業を、まとめて支援できます。
ただし、AIエージェントが常に正しく判断するとは限りません。導入担当者は、AIエージェントの処理が業務の目的に合っているかを検証し、人が結果を確認する工程も設けましょう。
RPAとは、決められたルールでパソコン上の作業を自動化する仕組み
RPAはRobotic Process Automationの略で、人が設定した手順に沿って、パソコン上の操作を繰り返すソフトウェアです。入力や転記のほか、条件に応じて処理を分ける設定もできます。
RPAは、担当者が同じ操作を繰り返す負担を減らせる一方、設定していない入力や例外に対応するには、処理手順を記した「シナリオ」の修正や人の対応が必要です。業務の進め方や操作対象のシステムが変わったときも、管理担当者によるRPAの設定の見直しが必要になります。
AIエージェントとRPAはどう使い分ける?向いている業務を確認

AIエージェントとRPAの使い分けは、部署や業務の名称だけで決めず、個々の作業内容に基づいて検討することが重要です。同じ問い合わせ対応でも、内容の解釈とシステムへの照会を分けると、それぞれに適した仕組みを検討できます。
RPAが向いている業務:決まった手順で繰り返す入力・転記・集計など
RPAによる自動化に向いているのは、例外が少なく、入力項目や手順が定まっている作業です。例えば、次のような業務が挙げられます。
- Excelの一覧にある情報を、顧客管理システムの決まった項目へ転記
- 複数のファイルにあるデータを集め、決まった形式で集計
- 販売管理システムのデータを使い、所定の形式の請求書を作成
いずれも、入力項目と処理の順序が定まっていることが前提です。
AIエージェントが向いている業務:内容の解釈や複数の情報整理
文章の意味を読み取り、必要な情報を集めて整理する業務は、AIエージェントによる自動化を検討できる業務です。問い合わせ文を読み、購入履歴や社内情報を参照して回答案を作る業務や、複数のニュース・資料から要点をまとめる業務などが該当します。
同じフォームに届く問い合わせでも、文章の意味によって参照すべき情報や次の対応は変わります。このように、入力内容を解釈して進め方を選ぶ部分が、固定された手順の実行との違いです。
また、一つの業務に「内容の判断」と「定型的な入力・照会」が混在する場合は、AIエージェントとRPAの併用も検討できます。
AIエージェントとRPAを組み合わせる「APA」と活用例

AIによる判断と、決まった手順に沿う定型処理をつなぐ選択肢の一つが、APAです。APAはAgentic Process Automationの略で、エージェンティック・プロセス・オートメーションと呼ばれます。
本記事で紹介するのは、AIエージェントとRPAなどの自動化を組み合わせ、業務全体を進める考え方です。
判断と定型処理をつなぎ、業務全体を自動化する考え方
APAで着目したいのは、自動化した作業の間に残る情報の受け渡しです。情報の取得から判断、システム上の処理までをつなぎ、AIエージェントが処理を選び、RPAが決まった操作を担う構成を考えます。
AIエージェントとRPAの連携を設計するときは、両者だけで処理を完結させず、人が確認する工程も含めて役割を決めましょう。すべての工程を無人化することを前提にする必要はありません。
既存のRPAで安定して処理できている作業は、連携先として活用を検討できます。AIエージェントにはツールを通じた実行能力もあるため、どの構成でもRPAが必須というわけではありません。
活用例:問い合わせの理解から在庫照会・回答作成までを連携
在庫に関する問い合わせを例に、AIエージェントとRPAの連携の流れを見てみましょう。
- AIエージェントが問い合わせ文を読み、対象商品と確認内容を把握
- RPAが基幹システムを操作し、対象商品の在庫数を取得
- AIエージェントが取得結果を基に回答文を作成
※仕組みを説明するための想定例であり、実在企業の導入実績ではありません。
この連携で減らしたいのは、問い合わせの確認、在庫照会、回答作成の各工程を、担当者が手作業でつなぐ負担です。
人が対応する工程の設計例として、商品を特定する情報が不足している場合や、在庫照会が進められない場合は、担当者へ対応を戻します。AIエージェントが回答を作成できた場合も、送信前に担当者が内容を確認する運用から検討しましょう。
AIエージェント・RPAの導入は3ステップで進める

AIエージェントやRPAの導入は、対象業務と目的の整理、役割分担とツールの選定、小規模な検証の3ステップで進めます。既存のRPAが担う作業と、人が対応している作業を見直しながら、順に進めましょう。
ステップ1:対象業務を洗い出し、自動化する目的を決める
まず、導入担当者は、時間がかかる作業や手戻りが多い作業を洗い出し、自動化を試す業務を一つ選びます。「自動化したい」で終わらせず、その業務のどの負担を減らしたいのかまで明確にしましょう。
次に、選んだ業務を「毎回同じ手順で進める部分」と「その都度、内容を解釈・判断する部分」に分けます。既にRPAで処理している部分と、人が対応している部分も書き出してください。
手順が曖昧な箇所は、現場の担当者に実際の処理を確認して整理します。自動化する業務と目的を明確にしてから、AIエージェント・RPA・人の役割分担を決めましょう。
ステップ2:AIエージェント・RPA・人の役割を整理し、ツールを選ぶ
作業ごとの特徴を踏まえて、RPAを使うか、AIエージェントを使うか、APAとして組み合わせるかを整理します。その際、自動化する範囲と併せて、人が確認する場面も決めておきます。
導入するAIエージェントやRPAのツールを比較する際は、次の項目を確認しましょう。
- 既存システムや運用中のRPAとの連携可否
- 想定する構成での導入費・維持費
- 業務やシステムの変更時に必要な修正と担当者
- AIの判断を後続処理へ渡す範囲と、人へ確認を戻す条件
導入費・維持費は「AIだから高い」「RPAだから安い」と決めず、採用候補のツールと連携構成ごとに比較してください。AIエージェントとRPAの連携設計やツール選定が難しい場合は、専門家の支援を受けることも選択肢です。
ステップ3:小さく検証し、効果と運用上の問題を確認する
AIエージェントやRPAを導入する際は、最初から全社の業務を切り替えず、一部の業務に対象を絞って検証します。ステップ1で決めた目的に照らして、狙った負担を減らせたかを確認しましょう。
検証では、AIエージェントの出力や判断が適切か、RPAが想定した手順で処理できるかをそれぞれ確認します。処理に問題があれば設定や運用を見直し、確認を終えてから自動化の対象業務を広げる進め方が考えられます。
AIエージェントやRPAの稼働後も、業務や関連システムの変更に合わせた設定や処理手順の見直しが必要です。導入担当者は、稼働後の管理担当者を決め、ツールを利用する従業員への説明や教育も含めて運用を準備してください。
まとめ:AIエージェントとRPAの違いを理解し、自社の業務に活用しよう
- RPAは固定手順の実行、AIエージェントは状況に応じた判断・実行に特徴がある
- 判断と定型処理が混在する業務では、両者をつなぐAPAも選択肢になる
- 導入は小さく検証し、人の確認と継続的な保守を含めて運用する
AIエージェントとRPAの使い分けでは、自動化したい業務に固定手順と状況に応じた判断がどの程度含まれるかを確認します。両方が混在する場合は、AIエージェントとRPAを連携させる方法も選択肢です。導入後の人による確認や保守まで含め、小さく検証しながら運用を整えましょう。
まずは自動化したい業務を一つ選び、固定手順で進められる作業と、その都度判断が必要な作業を書き分けてみましょう。


